ToSUe's Bibliothek

腎臓、透析、リウマチ・膠原病を専門とする内科医です。面白かった本や日々感じたことの他に、個人的に関心がある腎病理に関する論文なども紹介していきます。

【In-Flight Medical Emergencies A Review; JAMA 2019より】

航空機内での救急疾患対応について、とある医療ニュースサイトで取り上げられていた論文で、興味深かったので原文を取り寄せてみました。

 

【Summary】

Importance
航空機内での救急疾患は医療資源が限られた非常に複雑な状況の中で発生する。医療従事者はしばしばこのような急患対応をフライトチームから要請されることがあるが、医療従事者の大多数はそうした経験は少ない。

Observations
航空機内での救急疾患は604フライトに対して1回、あるいは100万人の乗客に対し24~130人の頻度で起こるとされている。機内発症の疾患イベントは特殊な状況下で起こる。たとえば飛行中の機内の気圧は5000から8000フィートの高度であり低酸素下でかつ湿度も低いといった環境である。
合衆国では必要最小限の医療キットは飛行機内に搭載されている。具体的には、体外除細動器、止血セット、基本診察セット、静脈点滴ライン用の開始輸液、そして一般的な主訴・症状に対する投与薬剤などである。それら必要最小限の医療キットの内容は国や航空会社によって異なる。航空機内での救急疾患のうち、最もCommonなは失神あるいはNear-Syncopeである(32.7%)。ついで消化器症状(14.8%)、呼吸器症状(10.1%)、そして心血管疾患(7.0%)である。

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[原著より引用]

機内救急疾患のうち4.4%は予定航路を迂回して別の飛行場への着陸が必要であると予測されている。合衆国ではこうした機内での救急対応に参加するボランティアを訴訟リスクから保護する目的で良きサマリヤ人の法などがある。機内の急患対応の要望に答える義務やそれに対する法的保護の様式は国によって異なる。医療ボランティアは自身の背景やスキルについて理解してもらい、機内スタッフや地上との交信をしながら所見を伝え、アドバイスを仰ぎつつ初期診療にあたるべきである。地上からのアドバイスに準じた治療では場合によっては機内での侵襲的処置にも及ぶことがある。

Conclusions and relevance
機内での救急疾患の最も多い原因は湿疹である消化器症状呼吸器症状そして心血管症状である医療従事者はこれらの症状に対して対応しなければならない機内スタッフや地上からの医療情報支援も含めても一丸となったチームとして当たらなければならない。

 

【所感】

失神を始めとしたこれらの症状はやはり気圧の変化などが引き金となって起こるものなのでしょうね。どれもいわゆるRed flagがある症状ばかりなので、できれば遭遇したくないものですね。。この論文の中では機内でどのように対応したらよいかなどのマニュアル的な表もあり、勉強になりました。

 

[今日のBGM] スクリーモ (スクリーム+エモーショナル)ロックのひとつです。メロディアスな叫び声(?)。

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