ToSUe's Bibliothek

腎臓、透析、リウマチ・膠原病を専門とする内科医です。面白かった本や日々感じたことの他に、個人的に関心がある腎病理に関する論文なども紹介していきます。

緑茶ポリフェノールは抗酸化作用により高尿酸血症と腎血管障害を防ぐ働きがある

[原著]
Green tea polyphenols protect against preglomerular arteriopathy via the jagged1/notch1 pathway

Am J Transl Res 2018;10(10):3276-3290

 

[要約] 
 高尿酸血症による糸球体の血管障害は慢性腎臓病の進展因子である。 緑茶ポリフェノールは抗酸化作用により高尿酸血症を防ぐ働きがある。しかし緑茶ポリフェノールの腎機能に対する影響は依然として明らかにはなっていない。正常のラットと腎不全ラットにそれぞれ酸素毒性物質を注射し高尿酸血症と腎不全、腎血管障害(内腔狭窄)を惹起した. 腎不全ラットは同時に緑茶ポリフェノールを投与した。 腎不全ラットに緑茶ポリフェノールを投与した群では組織学的な糸球体の血管障害が軽減され、蛋白尿, 血中の尿素窒素・尿酸・クレアチニン値・活性酸素濃度が減少した。組織学的には腎組織内の各血管におけるJagged1/Notch1 の発現が減少していることが確認された。緑茶ポリフェノールを投与されたラットでは Jagged1/Notch1, Hes5,pSTAT3の発現がそれぞれ回復していた。そして緑茶ポリフェノールによるこれらNotchシグナル関連分子の抑制はsiRNAによって阻害された。これらのことから、緑茶ポリフェノールは 慢性腎不全の糸球体の血管障害において、Notch シグナルの発現を担保することによって活性酸素の発生を抑制し、血管障害を軽減することが示唆された。

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                                (原著より引用)

[所感]
既存の腎不全(+高尿酸血症)モデルのラットにさらに酸化ストレスを惹起し、そこに緑茶ポリフェノール投与したらどんな効果があったかを検討した論文です。実験動物、培養細胞を用いて組織内での発現を免疫染色やin situハイブリダイゼーション、リアルタイムPCRと詳細に検討されています。本論文中の写真ではNotchシグナル関連分子の腎組織内での局在が血管内皮細胞や平滑筋細胞(中膜)にあるように見えましたが、この両者の培養細胞はハンドリングが難しいorサンプリングそのものが難しいため、細胞実験ではHK-1細胞(ヒト鼻咽頭癌上皮細胞)を用いて機能解析をしています。
Notchシグナルといえばpleiotropic(多面的)な機能を持つシグナルとして有名です。腎臓においては胎生期の発生段階の糸球体や、腎疾患の組織内(podocyte,ボウマン嚢上皮細胞 etc.)での発現およびその機能も多数報告されています。Pleiotropicの名の通り、腎臓の(細胞レベルでの)組織障害を促進する場合からこの論文のように抑制するはたらきまで様々です。ですので、Notchシグナルに関する論文が出たときはどっちのはたらきなのか、注意しながら読まなくてはいけません。

 

[今日のBGM] アメリカでホームステイしていたときに聴いてました。

I Try

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