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腎臓、透析、リウマチ・膠原病を専門とする内科医です。面白かった本や日々感じたことの他に、個人的に関心がある腎病理に関する論文なども紹介していきます。

リウマチ患者における生物学的製剤使用が腎予後に与える影響【Kidney International 2018より】

【原著】
Treatment of rheumatoid arthritis with biologic agents lowers the risk of incident chronic kidney disease

Kidney International (2018) 93, 1207-1216


【要約】
関節リウマチ(Rheumatoid Arthritis;RA)はその慢性炎症や治療に使用する薬剤の腎毒性の面から腎機能低下を起こしやすい病態と考えられている。
しかし近年発達してきた腎毒性をきたさない治療薬がRA患者の慢性腎不全のリスクを下げるかどうかについてはほとんど検討されていない。
これを検討するため2006年から2013年の間でアメリカにおける20,757人の eGFR 60mL/min/1.73㎡以上のRA患者のコホートを用いた。
生物学的製剤が CKD の進展をeGFRがベースラインより25%以上の低下をもってeGFR<45となること、eGFR 3以上の低下/年となることとそれぞれ定義し、生物学的製剤の開始されやすさでpropensity-matchした 患者群においてCoxモデルと多項ロジスティック回帰分析をおこなった。
20,7572の患者のうち 4,617人で生物学的製剤が開始された。これら患者群では生物学的製剤を用いなかった郡と比較し、 先程のCKD の発症リスクが有意に低下した(hazard ratios 0.95 and 0.71, respectively)。生物学的製剤で治療をされた患者群では eGFR の低下が有意に抑制された。すなわち、生物学的製剤の使用は CKD 発症リスクと、eGFR低下に対する独立した抑制因子と考えられた。

 

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(原著より引用)

[所感]

生物学的製剤がRA治療の重要なポイントを占める昨今、本当にこれら薬剤が腎予後を改善するのか、という議論はこれまできちんとされていませんでした。今回の報告の結果を見るに、生物学的製剤が腎保護をするメカニズムとしてはシステミックな炎症を抑えるだけでなく、腎臓の局所的な組織内での抗炎症作用や腎臓固有の細胞に対するダイレクトな保護効果があることが示唆されます。

 

 [今日のBGM] マイケル・ジャクソンのバックバンドで弾いてた人です。カッコいい。

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