ToSUe's Bibliothek

腎臓、透析、リウマチ・膠原病を専門とする内科医です。面白かった本や日々感じたことの他に、個人的に関心がある腎病理に関する論文なども紹介していきます。

書籍紹介【野村のイチロー論】

野村のイチロー論

野村のイチロー論

 

内容(「BOOK」データベースより)
天才vs凡才、名将がはじめて書いた究極の野球人間論。「正直に言う。私はイチローが好きではない。しかし、彼の才能に最初に目をつけたのはこの俺だ」

[読後所感]
3月に野球界の現役レジェンドであったイチロー選手が引退されました。引退試合後のセレモニーの映像は、とても感動的なものでしたし、記者会見もイチロー節全開の応対で、言葉の一つ一つに重みを感じながらテレビを観ていました。イチロー選手は世代も近く、いつもそのストイックな姿と言動にいつも感銘を受けていました。私は野球小僧ではなかったですが、それでも小学校時代は遊びといえば講演で友達とキャッチボールが定番でした。
もともと野村監督のコーチングなどの本は読んでいましたが、テレビで見るぶっきらぼうな喋り方とは正反対の、極めて穏やかで理路整然とした語り口がとても印象的で、野球選手である前に社会人の一員として、一人の人間としての心構えの教育を非常に大切にされているあたりにとても感銘を受けていました。
そんな野村監督がイチロー選手の引退のちょうど一年前に書いた本です。
イチローのことが好きではない」と前置きしながら、技術や野球に対する姿勢については詳細な分析のうえで「天才」あるいは「凡人では到底届かない存在」と称賛すべきは称賛し、メディアへの応対の仕方など、社会人の一員として苦言を呈するべきはきちんと呈するといった非常に理知的な(というよりは人間愛に近い)とてもすがすがしい読後感でした。感心するばかりではなく、明日からの振る舞いに必ず良い影響を与えてくれる一冊です。

[今日のBGM] 病気療養から待望の復活。歌がめちゃくちゃ上手くなってる気がする。

Head Above Water

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【書籍紹介】全米は、泣かない。

全米は、泣かない。

全米は、泣かない。

 

 内容(「BOOK」データベースより)
芸人で初めてTCC新人賞を受賞した五明拓弥ソフトバンクモバイル白戸家シリーズ」、au「三太郎シリーズ」、TSUBAKI「日本の女性は、美しい。」、LUMINE「試着室で思い出したら、本気の恋だと思う。」、ビタミン炭酸MATCH「青春がないのも、青春だ。」などを生み出した名だたるコピーライター・CMプランナーに聞いた。「人の心を動かす言葉」はどうやったら作れるようになるんですか?

 

[読後感想]

 とあるビジネス書まとめランキングサイトで上位にランクインされていたので読んでみました。

 誰もが一度は見たことがあるポスターのキャッチコピーや、テレビ CMをつくる気鋭のクリエイターの方々が、人の心に刺さるフレーズや映像をどのように作り出すのか、その秘密についてお笑い芸人でありコピーライターである筆者がインタビューをするという形で構成されていました。
 どのクリエイターさんも本当にそれぞれの考え方や人の心への響かせ方についての異なったロジックがあり、私自身はクリエイティブな仕事をする人間ではないですが、読んでいて大変興味深かったです。
本文はもちろん面白かったのですが、中でもとりわけ興味深かったのが、おまけとして収録されていた、直木賞作家でお笑い芸人の又吉直樹さんとの対談記事です。
お笑い芸人さんと言うと、大喜利での当意即妙な返しにいつも大笑いさせられるのですが、実はそこには短時間の(数秒の)中で面白さを生み出す実に計算され尽くしたプロセスがあることが語られ、まず驚かされました(知識と直感的なセンスで答えているのかと思っていた。。。)
 そしてその考え方は、小説を書くときにも通じるというのをとても分かりやすい例えで説明されていて二度驚かされました。さらに、一冊の小説の中に人の心を動かす緻密な仕掛けをどれだけたくさん作るか(ご本人の言葉では「編み込むか」)、について書かれており、それに気付くか気付かないか、読み手も非常に試されていることもわかりました。(この本を読んで改めて、自分の文章力の拙さを痛感しました。。。。。。)

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全米は、泣かない。 [ 五明拓弥 ]
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[本日のBGM] あのDragon ashも曲のイントロに使った、名曲です。

Siamese Dream

You tube''The Smashing Pumpkins - Today (Live) - No Alternative - 1993''で検索

読書紹介【に・ほ・ん・も・の】

に・ほ・ん・も・の

に・ほ・ん・も・の

 

 [内容紹介](Amazonホームページより)
中田英寿が47都道府県を旅して出会った日本の「わざ」と「こころ」
日本の事を知るために47都道府県を巡る中田の旅は6年半に及び、移動距離は20万kmになった。その間、訪れた人やスポットの数は約2000に。
そこで中田は、現地に行かなければ分からない、インターネットでは分からない素晴らしき日本がある事を知った。
本書では中田が47都道府県から厳選した、世界の人に誇りたい日本の逸品=“にほんもの”と、それを生み出す日本の「者」たちを紹介。
それは、“日本人も知らない、日本の本当にいいもの”。
「料理」「日本酒」「旅館」「手みやげ」「工芸」という5つのジャンルで
一生に一度は体験したい珠玉の“にほんもの”を収録する


[読後感想]
元サッカー選手の中田英寿さんが引退後、世界中を旅する中で改めて日本の文化や伝統工芸に向き合う必要がある、と感じたことから始まった国内2000箇所の旅のうち5つのジャンルでピックアップされたものの記録です。
旅の様子はテレビで時々は見ていて、とても面白く思っていましたが、全部を見ていたわけではなかったので、本になったことを知りすぐに読んでみました。まず、写真がとても美しい。食べ物とかはここまで寄るか!といったくらいの接写で、実際食べている本人よりも細かいところまで見えているのではと思うほど。
内容の中で印象に残ったのは日本酒のところ。文章に特に熱がこもっていて、現在の御本人の事業につながる素地が個々にあったのだなぁと思いながら読みました。

最初、本人が執筆したのかと思っていましたが、そうではなく、ライターさんが文章を書きところどころにインタビューでの発言が差し込まれる程度でした。もっと本人の言葉が読みたかったというのが一点だけ残念な点でしたが、それでもパラパラと美しい写真を眺めながら読むのには適した一冊でした。 


 

[今日のBGM] これも軽音部でカバーしました。とてもいい曲です。

こいのうた

You tube'' 「こいのうた」LIVE GO!GO!7188''で検索

書籍紹介【臨床がわかる腎生理】

臨床医になって、あるいは腎臓内科になって最初のうちは電解質の本や腎生理の本をたくさん買い込んできて読んでいました。この分野には名著と言われるものがたくさんあって、私自身も繰り返し読んでいる日本語の教科書だけでもパッと思いつくもので10冊くらいあります。

それに加わる一冊が本日ご紹介する本です。 

臨床がわかる腎生理

臨床がわかる腎生理

 

 

もとは英語「Renal Physiology: A Clinical Approach, Mark Zeidel著 」という教科書ですが、その日本語訳版です。
臨床医のために特に必要な生理学の知識についてまとめられているのですが、とにかく、わかりやすくて、かつ、面白いです。

中でも興味深く読んだのが、第3章「形態が機能を決定する」の項です。
腎臓内に分布する血管の階層に始まり、糸球体や尿細管を構成する細胞のひとつひとつの構造と機能について解説が加えられていきます。
こうした、Structure(構造)-Morphology(形態学)-Function(機能)へと掘り下げていくアプローチはこれまでにも多くの教科書で踏襲されているのですが、この本ではときどき思い出したように差し込まれる臨床的なエピソードがスパイスとなって、とてもテンポよく、かつわかりやすく論が展開していきます。この本が本当に臨床医向けに書かれていることがよくわかります。

分量もコンパクトで初期研修医の先生や学生さんにもおすすめです。

 


 

(追記) 研究会で監訳者の上原先生にお目にかかる機会があり、サインをお願いしたところ快く書いていただきました。

 

[今日のBGM] 映画「Free Willy」の主題歌です。中学生の時にリアルタイムで聴いて、曲の美しさに感動しました。

Dangerous

You tube'' Michael Jackson - Will You Be There (Official Video)''で検索

【In-Flight Medical Emergencies A Review; JAMA 2019より】

航空機内での救急疾患対応について、とある医療ニュースサイトで取り上げられていた論文で、興味深かったので原文を取り寄せてみました。

 

【Summary】

Importance
航空機内での救急疾患は医療資源が限られた非常に複雑な状況の中で発生する。医療従事者はしばしばこのような急患対応をフライトチームから要請されることがあるが、医療従事者の大多数はそうした経験は少ない。

Observations
航空機内での救急疾患は604フライトに対して1回、あるいは100万人の乗客に対し24~130人の頻度で起こるとされている。機内発症の疾患イベントは特殊な状況下で起こる。たとえば飛行中の機内の気圧は5000から8000フィートの高度であり低酸素下でかつ湿度も低いといった環境である。
合衆国では必要最小限の医療キットは飛行機内に搭載されている。具体的には、体外除細動器、止血セット、基本診察セット、静脈点滴ライン用の開始輸液、そして一般的な主訴・症状に対する投与薬剤などである。それら必要最小限の医療キットの内容は国や航空会社によって異なる。航空機内での救急疾患のうち、最もCommonなは失神あるいはNear-Syncopeである(32.7%)。ついで消化器症状(14.8%)、呼吸器症状(10.1%)、そして心血管疾患(7.0%)である。

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[原著より引用]

機内救急疾患のうち4.4%は予定航路を迂回して別の飛行場への着陸が必要であると予測されている。合衆国ではこうした機内での救急対応に参加するボランティアを訴訟リスクから保護する目的で良きサマリヤ人の法などがある。機内の急患対応の要望に答える義務やそれに対する法的保護の様式は国によって異なる。医療ボランティアは自身の背景やスキルについて理解してもらい、機内スタッフや地上との交信をしながら所見を伝え、アドバイスを仰ぎつつ初期診療にあたるべきである。地上からのアドバイスに準じた治療では場合によっては機内での侵襲的処置にも及ぶことがある。

Conclusions and relevance
機内での救急疾患の最も多い原因は湿疹である消化器症状呼吸器症状そして心血管症状である医療従事者はこれらの症状に対して対応しなければならない機内スタッフや地上からの医療情報支援も含めても一丸となったチームとして当たらなければならない。

 

【所感】

失神を始めとしたこれらの症状はやはり気圧の変化などが引き金となって起こるものなのでしょうね。どれもいわゆるRed flagがある症状ばかりなので、できれば遭遇したくないものですね。。この論文の中では機内でどのように対応したらよいかなどのマニュアル的な表もあり、勉強になりました。

 

[今日のBGM] スクリーモ (スクリーム+エモーショナル)ロックのひとつです。メロディアスな叫び声(?)。

Lies for the Liars

You tube ''THE USED the used earthquake''で検索

【帰してはいけない小児外来患者2 子どもの症状別 診断へのアプローチ】

帰してはいけない小児外来患者2 子どもの症状別 診断へのアプローチ

帰してはいけない小児外来患者2 子どもの症状別 診断へのアプローチ

 

[内容紹介](Amazonホームページより)
『帰してはいけない小児外来患者』に続編が登場!
泣き止まない、哺乳不良、発熱、嘔吐、下痢、腹痛、頭痛、咳、咽頭痛、歩行障害……、多様な主訴で外来を訪れる患者の中に、帰してはいけない子どもが紛れていないか?判断に悩みがちな17症状のレッド&イエローフラッグ、診断へのアプローチ、そして帰宅の判断(グリーンフラッグ)をまとめた。臨場感あふれる症例も掲載。
危ない症状に気づけるようになる、実践的な1冊。 

 

[所感]

 久しぶりに小児科の教科書を読みました。ひょんなことで、同じ業界ではない友人から小児科のことを聞かれる機会がありまして。
そういえば、小児科の知識なんて忘却の彼方。慌てて書店へ走り、手にとったのがこの一冊。国試&研修医時代の小児科ローテのときのことを思い出しながら、「あぁー、そうだったそうだった。小児の発熱ってこれも疑うんだった。」とか、「え?全然知らなかった。。。」とか、心の中で独り言をいいながら読みました。
本書の内容は、症例ベースに非典型的な主訴&見逃してはいけない疾患が書いてあり、説明がとてもわかりやすくまとまっています。
中でも、「誤飲で気をつけなければいけないこと」や「川崎病と見せかけて可能性リンパ節炎」など、漫然と診てたらうっかり帰してしまいそうな臨場感があるケースがとても印象的でした。

 

大掃除をしていると研修医の頃のメモ帳が出てきて、読み返しながら、この頃は今よりもずっと貪欲に知識を吸収しようという気合があったなぁ、もっと頑張らなくては!と昔の自分に喝を入れられたような気がしました。

 


 


[今日のBGM] Enyaは心が洗われるような曲ばかりです。

On My Way Home

You tube '' Enya - On My Way Home''で検索

 

【BOHEMIAN RHAPSODY】

話題になってから少し時間は経ってしまいましたが、観てきました、「ボヘミアンラプソディ」。

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観た人は皆さん言っていますが、やはり最後のライブは圧巻でした。本人の映像と、映画の映像を比較したYoutube動画がありましたが、いかに本物に近いレベルで作り込まれているかがよくわかります。内容については詳細は書きませんが、私が面白いと思ったのが、映像の並べ方で感情の動かされ方が倍増するということです。それまでは屋内で薄暗い視野のシーンがずっと続いていて、最後にいきなりドカーンと開放感のある野外ステージでこれでもかというくらい感情が煽られまくる演技(というよりはむしろ本物に近い演奏)で、自然と体でリズムを取りたくなるくらい、椅子に座ってじっと見ているのがつらかったです。行き場のないエネルギーがジーンと涙となって出てくるような感じでした。ロックスターを題材にした映画はいくつもありますが、これは中でも特におすすめの一本になりました。

 

[今日のBGM]映画を観た人だけ見てください。

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You tube ''BOHEMIAN RHAPSODY (LIVE AID 1985 side by side with Bohemian Rhapsody Movie 2018) ''で検索